あまだれのごとく

時々迷い込む後悔の森

1.9.2019

 

 

 

月の変わり目だということに
気づかないほど、他の物事に神経を払っていた

 

 

 

昨日は、再び友人と朝から会った後、
恩師のコンサートを聴きに、Glienicke城へ

 

ここは、カール・フォン・プロイセンの夏の離宮で、
イタリアのヴィラに憧憬を持っていた彼の意向に沿って建てられた

 

ごく小さくてのどかな場所だけれど、
有名なサンスーシ宮殿とまとめて、
世界遺産に登録されている

 

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目の前に臨むはGlienicke See
こうしてみると、アドリア海を望んでいるように
見えなくも、ない

コンサートが開かれたOrangerieは、その名の通り
柑橘類の栽培のためにわざわざ建てられた温室

 

そんなに大きくない部屋に、椅子を並べて、という
小規模のコンサートだから、
演者との距離が近い

 

休憩時間中に、先生がわざわざこちらまでいらして、
息子さん方と、その彼女を紹介してくれる
そしてグラスワインまでご馳走になってしまった

 

正直、今は生徒でもなんでもないし、
ピアノを弾くことすらままならない

 

たった1年ドイツで習っていただけの私が、
こんなVIP待遇されるなんて、本当はあり得ない

 

彼女はドイツでは名の知れたピアニストだし、
並んでいる奏者は、ベルリンフィルの副席だし

 

演奏は言葉で言い表せないほど素晴らしくて
特に私はショパンが好きという話をしたことがあるけれど、
なんと2曲も曲目に入っていて、
もう感無量

 

挙句、実は彼女、その日が誕生日だったらしいのだけれど
身内と親友の方々とで開いた晩餐会に、
完全に部外者の私まで招待していただいた

 

暖かく迎えてくださったがために、
全く居心地の悪さは感じなかったし
もうご飯は美味しいわ、話は面白いわ
最後は息子さんたちの車で途中まで送ってもらって
(そしてまさかサザンをドイツで聞くとは思わなかった)

 

ここまでの縁を用意してくれたのは、
紛れもなく、私の母だ
この夕べを楽しみながら、
心の中でひっそり、感謝を重ねた

 

 

 

そして長月に入った今日が、私のベルリン生活の最後

 

深夜便でこっちに到着した友人と朝ごはんを食べて、
実に様々な、興味深い内容の会話を交わす

 

毎日会っていた友人と、一ヶ月も会わなかった
それなのに、全く変わらない空気感で
日本にいるようだ、と思わず錯覚してしまう

 

それから、既に到着していた別の友人の引越しの手伝いをしたのだけれど、
その前に、私の念願のアイスバインを食す

 

今月は私の誕生月だけれど、
多分その場には、誰も知り合いがいないだろうし、
ということで私のリクエストが通ったのだった

 

美味しかったけれど、
昨日もたくさん食べていたこともあって、
全部胃に入りきらなくて、苦しい

 

そして毎度のことなのだけれど、
ドイツ料理は本当に塩分量が多い上に、
中々水分にありつけない、そして日照りもすごくて

 

重いトランクを代わる代わる引きずり、
途中またアイスを食べたりしながら、
郊外の寮へと三人で向かう

 

そしてどうにか契約、入居が終わり、
彼女とはそのバス停で別れた

 

まあでも12月には確実に会えるし
きっと苦しんだり慣れたりしているうちに、
あっという間に時間なんて過ぎてしまうに違いない

 

朝から行動を共にしている彼女とは、
クレープをお供に、
公園でゴロゴロしながら、何気無い会話を楽しむ

 

そんな時にも、心の不安は拭いきれなくて、
きっと私はどこか、落ち着かない様子だったと思う

 

そして彼女のホステルのベットまでいき、
それでも会話は絶えなくて、
名残惜しい想いを抱えながら、19時半ごろ、
駅へと歩き出す

 

明るく別れたはいいけれど、
心境は再び、29日の夜のように真っ暗だ

 

ドレスデンは、やっぱり見慣れない土地だし、
誰一人として、私のことを迎え入れてくれる知り合いはいない
ザクセンの余所者に対する空気感もわからないし、
方言のきついドイツ語を聞き取れる気がしない

 

そもそも契約がちゃんとできるかとか、
パッキングが終わるかとか、トランク閉じるかなとか
明後日からの旅行は、上手くいくかな、とか

 

問題の大小は関係なく、
並列してしまった瞬間
極度の緊張に、押しつぶされそうになる

 

こんな時は、決まって
the brilliant greenのベストアルバムを、聞く

 

私は、音楽には疎い人間だと思う
けれど、どうしたって音楽がなければ生きていけない

 

昨日のコンサートでも、
耳の中、空間が素晴らしい音色で満たされるたびに、
こんなにも美しいものが
世の中に存在してよかった、と泣きそうになった

 

いつもなら、最初のBye Bye Mr. Mugから聴くけれど、
先ほどの別れを引き摺って
goodbye and good luckから

 

今夜、雪は降らないし、
陽の長い夏、まだあたりは明るくて
送り出されるのは、私の方

 

それでも、どうしても歌詞が重なり、寄り添う


大丈夫、耳の中にはいつでも
いつもの空間を呼び出せる