あまだれのごとく

時々迷い込む後悔の森

29.8.2019

 

 

 

ついにやってきた、別れの時

 

 

 

今週に入ってから、身体がどうも怠かった

 

それは紛れもなく、急に戻ってきた夏のせい
オープンエアーの劇場から、凍えながら走って駅に向かった夜を思い出す
今となっては、信じられない

 

火曜日から始まった倦怠感
ドイツの多くの建物には、エアコンが据え付けられていない
そして良く日の当たる私たちの教室、
私の席は、窓側に位置していた

 

私は、極端に寒さに強いけれど、
極端に暑さに弱い

 

そのせいで小学生の時、入院したこともあるし、
中高六年間屋外の部活を全うしたにも関わらず、
一向に真夏の太陽に打ち勝つことはできないままだ

 

涼しいはずの、ヨーロッパの夏
にも関わらず、連日の30度超えと、ギラつく陽光
そして、エアコンがないので、どこにも逃げ場がない

 

最後の授業だったのに、全く集中できないまま、
おまけに、内容も最も難しいところを取り扱っているので、
時々ちんぷんかんぷんになっていた

 

でも、体調を崩していたのは私だけではなく、
13人のクラスで、計3人も欠席者が出ていた

 

悔しいけれど、できるだけ食べたし、できるだけ寝た
それでもダメだったのだから、仕方がない

 

 

 

そして、ナーバスになっているのはもう一つ
別れが近づいているのを、肌で感じていたから

 

この一ヶ月間、私は皆んなと同じホステルで生活していたわけじゃないけれど、
それでも授業はずっと同じメンバーで受けていたし、
午後のプログラムでは他のクラスの子とも仲良くしていて

 

だけれど同時に、
これが終わったら、大半の人達とはもう一生会えないだろう、という事実

 

今まで、今生の別れ、
それもこんなにたくさんの別れを一気に経験したことなんてなかった

 

小学校はなんだかんだ地元だし、
中高大がエスカレーター式

 

この前、留学直前に皆んなと別れた時は、
とんでもなく悲しい気持ちになったけれど、
それでも皆んなとは1年後には必ず会える

 

急に、関係が断絶する感覚
それは酷く恐ろしくて、辛くて
考えれば考えるほど、
心の中が気持ち悪くなっていく

 

 

 

最後のお別れ会は、大学ではなく、船上のパーティー
ゆっくり会話を楽しむグループもあれば、
船室のディスコルームで踊り狂っている人もいて
(まあ私も連行されたのだけれど、笑)

 

素敵な夜であることには変わりないのだけれど、
3時間と聞いて、長いなぁ、と感じていた時間は、
本当に刹那、あっという間で

 

やっぱり私は、別れのタイミングで何を言うべきか分からないまま
クラスの子や、知り合いになった子
泣いてる子や、笑顔の子
皆んなとハグをして、
でも、ただ立っているだけの時は、
どうしていいか分からなくて、困り顔

 

必死に表情筋を上に持って行って、笑う
早くこの空間、閉じろ、と思ってしまう
言葉は出てこないのに、代わりに涙が出てきそうになってしまう

 

私たちの担当の先生は、本当にいい人
分かりやすいし、ウィットに富んでいたし、優しいし

 

手書きの文法のプリントは、きっとこれから私の役に立ってくれる
しかも最終日、触れられなかった箇所の分まで配ってくれたし


友達と帰り道、
「あんなに私たちに対して責任を持ってくれて、優しい先生は、
もう中々会えないだろうね」
と語り合った

 

彼とも、一生会うことはないのかもしれない
まあでも、私がC1とか取れたら、
それはきっと彼の功績が大きいだろうな、笑
もし取れたら、メールでも書いてみようかしら

 

 

 

最後、帰り道で初めて会ったルーマニア人の子と
途中まで電車が一緒になって、
名前も聞かなかったけれど、ポツポツ話す

 

こうやってドイツ語で色んな国の人と話しているのは
すごく不思議で、貴重で、
どうして今まで日本語だけで暮らしていこうとしていたんだろうと
本当に馬鹿だったな、と思う

 

そして彼女が降りてから、家までの帰り道
急にとてつもない孤独感に襲われた

 

この先、どうやって生きていこう、
ドレスデンで、一人で、
なんて考える

 

馬鹿げた考えに聞こえるかもしれないし
私も心中でそう思っていた、
けれど、本当にこの先、どうにもならないんじゃないかって

 

ベルリンに来る前、得体の知れぬ不安を抱えて飛行機に乗り込んだ
この一ヶ月、本当にいい友達に恵まれて、
最高に幸せで

 

でも、さっきの別れを経て、
あの状態に、無の状態に
急に揺り戻されてしまったような

 

それはまるで、夢から覚めた時の、虚無感に似ている

 

フラフラと帰ってきて、
シャワーを浴びて、着替えて、
ベッドに倒れこんで、
色々なことをおもって、少し泣いた

 

明日は金曜日だけれど休日
もう学校は、終わってしまったから


でも、
もう、あのトラムに乗って学校へ行くことも
この赤いファイルをあの教室で開くことも
馬鹿みたいな話をメンザですることもない

 

信じられない、けれど
受け入れるしかない
明日、私はどんな気持ちで目覚めるのだろう