あまだれのごとく

時々迷い込む後悔の森

21.8.2019

 

 

 

今日は授業後、
Alte Nationalgalerie(旧国立美術館)へ

 

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これも博物館島にある美術館の一つなのだけれど、
主に18世紀以降の絵画、
特にフランス印象派
それからドイツの古典主義やロマン主義の絵画を中心に収集している

 

印象派の展示には、名だたる画家の名画が並ぶ
モネやマネ、ピカソルノワールセザンヌなど

 

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以前、印象派とモネの話はしたことがある
モネに関しては、色彩感覚が私の趣味と完全に一致していて、
だからどの作品も追いたくなってしまうけれど
私は“印象派”が総じて好きなわけではない

 

というか、そもそも別に印象派の描き方が好きなわけではないのだと思う
印象派は、
太いストロークで風景を捉え、
同時対比の技法を使って色を表現するけれど、
私は繊細なタッチの絵か、もしくはパキッとした色合いの絵が好きだ

 

だから印象派の絵を仮に近くで眺めたとしても、
あまりこう、感情が沸き起こらない

 

その代わり、遠くからその絵を眺めた時、
特にカメラでその絵を写真に収めた時、ハッとする
カメラの画面に映る絵は、完璧に光と影、色彩を捉えていて、
窓の外を見ているよう

 

その時代には、カラー写真やカラー映画なんてものはなかったのに
私的には、印象派の絵はカラー出力できるようになってから、
本当の素晴らしさを放っているような気すらしてしまう

 

 

 

ドイツの近代画家として名高い、
アドルフ・フォン・メンツェル、
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ、
マックス・リーバーマン
これら作品が、画家ごとにずらりと並べられている

 

私がこの美術館で感じたのは、
同じ画家の作品が多く同じ展示室に飾られているということ

 

教養のない私的には、その方がわかりやすくてありがたい

 

メンツェルは、プロイセン王室御用達の作家で、
王家に関連する様々な名場面を描いた

 

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彼の作品で私が息を飲んでしまったのは、
室内の光と空気に対する、圧倒的な表現力

 

空間の薄暗さと、籠った空気、
その中でひしめく人々のざわめきまでこちらまで伝わってくるよう

 

私がかなり衝撃を受けたのが、
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの作品だった

 

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ロマン主義の代表者として知られる彼が描いたのは、
静かで荘厳な、宗教色溢れる作品

 

とはいえ、彼が描いたのは宗教的なモチーフではなく、
大自然の前に静かに立つ修道士の姿や、
自然の中で朽ちゆく、廃墟

 

あまりにも宗教的要素が強い、と批判にさらされたこともあるようだけど、
私が見た彼の画の印象は、必ずしもそうではない

 

私が知っている限りでは、
キリスト教は、常に自然を克服しようとしてきた
それは単に、人々が生き残るためにしてきた努力だった

 

でも、勿論そこには人間のおごりもあったのだろう
宗教の下、知恵をつけてきた人間は、
自然をも自由に扱えると錯覚してしまった

 

そして、現代では様々な問題が起きているし、
そもそも自然を自由に操れてなど、いない

 

けれど、彼の絵には、
人間の努力だけではどうにもならないもの、
つまり大自然のありのままの姿を受け入れる姿勢、
相反してきた自然と宗教の融合が、読み取れるような気がして

 

調べて見ると、興味深いことに、
彼の出身はスウェーデン
どうりで、と言っていいのか分からないけれど

 

彼の子供時代のエピソードや生い立ちを調べていると、
彼がどんな思いを抱えながらこの静謐で荘厳な絵画を描いていたのか、
少し、わかる気がする

 

加えて、彼はその後ドレスデンに転居していて、
アカデミーにも所属していたので、
ドレスデン美術館には彼の作品が収蔵されている
つまり、近いうちに再び私は彼の作品に対面することになるだろう

 

そして同じくらい私の心を打ったのが、
ヨハン・クリスチャン・クラウゼン・ダールの作品

またも興味深いことに、彼も北国・ノルウェーの出身だけれど、
ドイツ・ロマン派の影響を強く受けており、
彼もドレスデンを訪れた数年後に、アカデミーの会員に、
活動拠点もドレスデンが中心となった

 

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様々な姿を見せる水と、
夜に浮かぶ月明かりが印象的

 

そして、
マックス・リーバーマンは、ベルリン分離派の創立者の1人で、
ドイツ印象派の第一人者でもある

 

そんな彼は、ユダヤ人だったというだけの理由で、
ヒトラー率いるナチ党が台頭した際に、
その身分も栄誉も失ってしまった

 

そんな彼の絵が飾られている空間と同じ空間に、
ヒトラーが偏愛してやまなかったという、
アルノルト・ベックリンの作品も、沢山並んでいる

 

これを当時の人たちが見たら、どんな顔をするんだろう

 

そして、本日の私的な目玉

 

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ここに展示されている「死の島」は、3枚目の作品
そしてライプツィヒに飾られていたのが、5枚目
すなわち最後の作品

 

私としては、
やはりライプツィヒの「死の島」が最も完成されていたな、と感じる

 

それは、明らかに、
そこに潜む闇の静謐さが、違うから

 

ベルリンのものは、空が妙に明るい

その空間が現実に存在するような、
曙の空の下、遺体が運ばれているような、
そんな印象を受ける

 

一方で、
ライプツィヒのものは、
死の永遠性が、観る者の目に、垂直に刺さる
これが、不気味さと底知れぬ絶望感を呼び起こす


展示の場所の違いもあるだろう
ベルリンの方が人も多くて、
開けた明るい空間に飾ってある一方で、
ライプツィヒの方は、奥まった部屋に、ぽつねんと展示されているのだ

 

まあでもとにかく作品数が多くて、贅沢
にも関わらず、今日は無料で見られたのだから、
本当にコースには感謝が尽きない

 

ただ、16時から入って、18時に閉館だったので、
最後はやはり駆け足になってしまったし、
ショップを見る余裕もなかった

 

この前のGemälde Galerieも、最後ショップを見る余裕がなくて
いつかショップだけ回らなければいけなさそうだ

 

 

 

ああ、もう3週目
ここまで本当に早かったけれど、色々なことが起きた

 

最寄りの駅で、心細くトランクを引きずって、
同居人のおばさまを待ってきた日のことを思う
あれからは、何故かもう1年も経ったような気持ちだし、
あと2週間もしないうちにこの部屋を出るなんて、
考えられないし、考えたくもない

 

おそらくこれが最後のベルリン長期滞在に、なる
だって今のところ、なんのプランもないし
でも、そんな実感、全然湧かなくて

 

まるで、幼稚園児にでもなったかのような、気分だ