あまだれのごとく

時々迷い込む後悔の森

5.2.2019

 

 

 

昨日は、ゼミの面接

私の応募したゼミは今日の正午に発表だった

 

所用で大学を訪れていて、

昨日、控え室であった、名前は知らないけれど顔見知りの女の子に、

「もう、結果出ていましたよ」

と微笑みかけられる

流石の私も、ぎこちなく微笑み返すしかできなかった

 

他の友達に見守られ、そして(私の結果なのに何故か)急かされながら、

かじかんで震える手で、ホームページをそっと開く

 

合格者名簿のところに、私の番号はあった

 

あった、と呟いた途端に、大騒ぎし始める友達

 

なんだか、こうして私の結果を見守ってくれる人がいる、というだけで、

こんなにも、救われるものなんだな

 

 

 

はっきり言って、遠い昔の受験の記憶や、学部選択の時にも、

ここまでの不安を感じていたことはなかった

謎の手応えと、根拠のない自信は、常に私を追従してくれていた

 

今回ばかりは、駄目かもしれない、と

それも課題提出の直前に、思い始めたのだった

 

というのも、私がやりたい内容と、ゼミの方針が、合っているのか分からなくて

 

 

 

国際関係を、歴史的視座から見つめたい、というのは本当だ

 

けれど、私の興味は17世紀以降の歴史よりも、

それ以前、古代や中世かけての、民族史や文化史、または民俗学に寄っている

 

国家間の関係も勿論だけれど、

私の勉強は、支配者と被支配者の関係について、焦点を当てている

 

提出した書評や、自己紹介も、当然上記の要素が色濃く出ていて、

政治思想や政治理論、ひいては社会学的な知識を引用しがちだった

 

それと引き換えに、

国際政治や、外交史、それにいわゆる典型的な世界史の知識は、平均より欠けている

 

戦える武器として私に残されていたのは、

もう上に挙げた特異性、思考力、それから文章力だけで、

でも、それを価値として認めてもらえるかどうかが、分からなくなってしまった

 

そんなこんなで、昨日も面接まで非常に不安で、

教授と院生二人と対面した時、もうどうなることやらと思ったのだけれど、

そこでは予想外すぎる展開が待っていた

 

まず、志望動機を軽く述べた後、一発目の質問が、

旧東ベルリンのトルコ人街に住んでいた時の描写を拾われて、

「ポテトフライに容赦なくぶっかけられたマヨネーズ」

について尋ねられるとは思わなかったし、

「ため息が出るほど美しい文章ですね」

なんて、勿体無いにもほどがある賛辞を頂けるとは思っていなかった

(勿論、お世辞も入っているとは思うけれど!笑)

 

挙げ句の果てに、まだ入ゼミが決まったわけでもなく、

私と喋るのさえ初めてのはずの教授に、まだ決まっていない留学について、

「まあ、大丈夫でしょう、はい」

なんて何度も念を押されたことだった

(いや、あなた私のドイツ語聞いたことないじゃない!と思ったけれど、

なんだかその態度を見て、

「やっぱり、受かったかもしれない」

とちょっと確信を持ってしまったりも、したのよね笑)

 

でも、一番返答に詰まったのは、

「近代以降の政治の影響が色濃い旧東ドイツでの経験がありながらも、

近代史ではなく、中世史を選んだのは何故?」

という質問

 

この時まで、私は全くこのことを意識したことがなかった

なんなら今までの私のドイツ生活すら、

完全に軸足が東側であることにすら、気がついていなかった

 

私が住んでいたミッテ地区も、

この前研修旅行に訪れたエアフルトも、

それから、留学先として希望しているドレスデン

 

変な話、私のドイツの思い出は、大部分が旧東ドイツに彩られている

それなのに、私は全くこの問題に深入りしたことは、なかった

 

結局、正直に「幼少からの興味が勝ちました」と答える他なかったのだけれど、

これは、少し考えなくてはならない問題なのかも、しれないな

 

 

 

そして、必修を一緒に受けている人も、あの例のグループも、

奇跡的に私の周りの人々は、誰も希望のゼミから漏れていなくて、

心から喜びを共有しあえたことが、本当に嬉しかった

 

正直、自分が落ちてもショックだけれど、

誰かに気を使ったり、その気を使っている自分が偽善的に見えたりするのは、

別種の辛さがあるから

 

本当に、運の良さもあるかもだけれど、

優秀な人たちと、普段から過ごしていたんだなぁ、という実感

 

 

肩の荷が降りると同時に、

出口の見えない、深い闇の中に閉じ込められているような感覚、

それらがいきなり追い払われて、

重くて、淀みきって、引きずるようにしていた心に、

一気に晴れ渡った空模様が広がった

 

私のゼミには、すでに知り合いになっている人も、そうじゃない人も含めて、

個性豊かで、興味深い人々がたくさん集まっているはずだ

 

本当に来年からの活動が、楽しみだなぁ!

 

 

 

そして、こんなことをつらつらと書き連ねているけれど、

まだ、私は運命の分かれ道にさしかかったばかり

 

明日が、留学の面接日

結果が出るのは一週間後だ

 

多分、そんなに厳しい選考ではない、

それでも、失敗したくないのなら、

気張りすぎず、でも緩みすぎず、

適度にほぐれた心持ちを保つことが、大切よね

 

これまで、たくさんの人を巻き込んで、

たくさんの人に肩を叩いてもらった

 

それを、無駄にしないように、

あるものを今、すっと置いてくるだけ