あまだれのごとく

時々迷い込む後悔の森

16.10.2019

 

小降りの雨が顔を打ち、少し肌寒い夜明け前

 

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ぼうっとしていたらバスは逃すし、
キャンパス内で若干迷ったし、
どうにか1限には間に合ったものの、
大教室かと思いきや、セミナーのような雰囲気

 

恐る恐る、空いている席に腰掛けると、
まもなく講義が始まった

 

その講義の内容は、ホイジンガーの“中世の秋”を題材として、
14・15世紀の西洋の中世をさらおう、というものなのだけれど
まあ内容がドンピシャすぎて

 

勿論分からない単語が圧倒的多数なのだけれど、
どうにかテーマくらいは把握できるんだな、ということが分かった

 

それはひとえに、私のドイツ語力のおかげではなく、
中途半端ながらも、個人的に積み上げてきた努力のおかげだと実感した

 

眠い目をこすって、あるいは電車の中で流し読みして、
メモもさして取らずに、読み流してきた文献が大多数だけれど
それでも“未知”ではない、というのは大切なんだな

 

当時は、別に実用性自体のない知識・分野だし、
こんな中途半端なことをして、意味なんてない
私は何をしているんだろう、と溜息をつくことも少なくなかった

 

けれど、たとえどんなこと、どんな方法を取っていたとしても、
全てが無駄になることなんて、
ひとつもないんだな

 

拭いがたい興味を感じたとしたら、
無理に捨てようとしなくても、
中途半端でもいいから、続けたり、飛び込んだり
そういうことを、今はすべての人に伝えられそうだ

 

 

 

そして講義が終わった後は、
対岸の建物である、ザクセン州立図書館へ

 

SLUBという略称で親しまれているこの図書館は、
州の図書館としても、大学の図書館としても使われていて
登録などなしに、誰でも入館することができる

 

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実は、私がこの大学を訪れようと決めた3番目の理由が、
この図書館だった

 

でも、もっと本当のことを言えば、
デモビデオを見た時に真っ先に映ったのが、この空間で

 

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これを見た瞬間に、私の心は決まったようなものだったので、
直感としては、1番の理由なのかもしれない

 

とにかく、生でみると
大きさと美しさに圧倒されて

 

私は、ここにある本全てを、自由に読む権利があるんだ
そのことに、興奮するとともに、
けれどまだまだ殆ど読める、とはいえないレベルの自分の能力に
やるせなさを感じる

 

ああ、もう一生ここに引きこもって、
ずっと本に囲まれて生きていたいよ

 

けれど、そういうわけにもいかず
先ほどの講義の録音を聴きながら、
一生懸命、ノートを書き出す

 

お昼時まで粘ったけれど、
終わったのは三分の一
しかも、今日は初回ということで、
講義自体が60分間しか続かなかった

 

これでこの速度って……
しかも全て100%理解したのか、と言われれば
決してそういうわけではない

 

でも、履修は快く認めてもらえたわけだし
及第点は取りたいし
というか、もっと早く耳を慣らしたい

 

早起きしたせいか、帰ってきてからもとにかく怠くて、
書き出しの続きを放棄しようかとも思ったけれど、
明日も明日で、新たな講義があるわけで、
取り逃すわけには、いかない

 

それに、日記もそうだけど、
一分一秒ごとに、記憶の新鮮さは失われていって、
効率が悪くなることは必須だから

 

でも、結局最後の修了についての説明を除いてわずか50分間
なのに、トータル5時間近くかかっている
あーあ、先が思いやられるけれど
回を追うごとに、少しずつでもマシになることを、今は祈るよ

 

 

 

15.10.2019

 

 

 

今日は、初めての登校日

 

2限からだったのだけれど、全く空気がつかめないし、
建物自体はまるっと理系の雰囲気を漂わせていて、
こんなところで本当に近世イングランド史の講義が開かれるの、
と不安だったけれど
始まったのはその通りだったので、ホッとなでおろす

 

思っていたよりも、教授は話すのがゆっくりで、
とりあえず今話しているテーマは分かるし、
全知識をフル動員すれば、60%くらいは理解できるかな、という感じだった
けれど、これは初回のイントロに近い部分だからかな、と震えている

 

どちらにせよこの講義ではテストを受けないと思うのだけれど、
思っていたよりも人が少ない上に、
アジア人の外見をしているのは私一人だけで、
テストだけ受けずに潜ってたら、絶対にバレそうだな
うーん、と悩んでしまう

 

90分集中した後、完全にエネルギー切れでメンザへ
初めてだったのだけれど、
出てくるものがまともで、もう泣きそう
2ユーロしないパスタでも、味付けまともじゃん……

 

そんな幸せモードに包まれていたら、即事件
さっきまで持っていたはずの学生証が見当たらず、
検討の付く場所を探したけれど、やはり出てこない

 

学生証は定期を兼ねているから、
なければ致命傷、ということで、
再発行の手続きへ

 

あーあ、もうこんな時間には家に帰っているはずだったのにな、
などとも思ったけれど、
如何せん今日は天気が良くて、
思わず散歩に繰り出してしまいそうなほど

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本キャンパスから再発行手続きをしてくれる事務所までは
徒歩で20分強なのだけれど、
その合間にEiscafeの看板を見つけてしまい
終わったら絶対行くぞ、と意気込む

 

結局手続き自体は簡単で、
6ユーロかかったのは痛いけれど、仕方がない
今回に関しては、
“なんかなくしそうだな……”と気をつけていたのに失くしてしまったし、
早期に気づいて二次災害が発生しなかったので、良しとしよう

 

それからお待ちかねのカフェを訪れたら、
今までドレスデンで見た中で一番安いし、雰囲気もいいし、
何より、美味しくて

 

思わず食い気味に、
“冬の間もやってますか?”
と聞いてしまったほどで、
これは私、通ってしまう予感だな

 

帰ってきた頃に、隣のルームメイトから連絡が来ていて、
“今日一緒に夕飯食べない?”
とのことで、揚々と承諾

 

料理をしながら、食べながら、様々なことを話して、
終わったらまた、今日の授業の復習をして

 

復習、というよりも、
録音していたもののDiktationのようなものなのだけれど、
如何せん思っていたよりも音質が悪くて、苦戦
こりゃあ、授業中にもっと聞いておかないとやばいな
いや、今でも精一杯努力はしているのだけれども

 

そして明日は恐怖の1限
だし、ちゃんとテストを受ける予定の科目なので、
本当に寝坊だけはできない

 

頼むよ、自分

 

14.10.2019

 

明日から始まる学校に震えながら、
何事もない日常を過ごした、休日

 

語学の授業が始まるのは来週からで
故に月曜日であるにも関わらず、今日は授業がなかった

 

とにかく粛々とドイツ語と、原稿を進める

 

今日も外はいい天気だったのだけれど、
ただ買い出しに出かけただけ

 

一段しか使えない冷蔵庫で食材を管理すること、
作り置きをするのにもある程度時間は必要なこと、
部屋にも食材を置かないとやりくりできないこと、
その部屋も全て、自分で掃除しなければならないこと

 

当たり前じゃなかったことが、今や当たり前で
どうして一日休みなのに、何も完了していないのに、
こんなに時間が経っていたり、疲れたりしているんだろう
と思うけれど、
多分、こういった小さいことの積み重ね

 

 

 

迷った挙句、ダメ元で空きのないSeminarの教授に
昨日書いたメールの返信が、今日の午後に届いていた
断られはしなかったけれど、承諾でもなく、
やんわりと他のVorlesung(講義)を勧められる

 

なんてったって、Einschreibung(履修登録)を公式に習ったのが10月11日
なのに、私が取りたいと思っていたMediävistikの
特にSeminarたちは、9月16日から早いもの順で埋まっていて
そりゃあ、ねえ

 

はなから留学生の履修は認めてられていないかのような制度だけれど
それはそれで理にかなっていて

 

何故なら、本来これを履修できるのは二年次からなわけで
一年生扱いになる留学生が取る権利はないのだ

 

こんなこと、日本にいるときは分かりっこないし、
そもそもSeminarについていくような語学力もないし
と、どこか胸を撫で下ろしている自分もいる

 

どちらにせよその時間は
他に取りたかった講義と重なっていたので、
丁度良かった、とも言えるのかもしれないけれど

 

とにかく冬学期はドイツ語力を高めることに注力して、
春学期、どうにか交渉して、席が取れればいいのだけれど

 

とにかく初授業に備えて、
今日は早めに布団に潜ろう

 

 

 

13.10.2019

 

 

 

とにかく毎晩、出歩いていて
“20時以降の外出なんて(怖いし)絶対にしない!”
なんて言っていたのは、果たして誰だったのか

 

11日はチェコ人の友人のいとこが遊びに来るということで、
Neustadtの一角のバーでビールを飲みながら、
私はkickerに初挑戦

 

これがまた、笑っちゃうほど下手で、
“ごめん……ごめん……”と言い続ける他なかったのだけれど、
ようやく仕組みが分かってきた最後のゲームでは、
めちゃくちゃシュートを入れまくって勝ってしまうという奇跡

 

元々、ゲームは下手ではないはず、なので
また皆んなで楽しめる機会があったらいいな

 

そして昨日はまさしく友人の誕生日で
私たちは毎回その子の家のフラットに呼んでもらっているのだけど、
昨日は韓国人の子達二人が、
サムギョプサルと(何故か)オムライスをふるまってくれた

 

けれどまあ、この二日間も引き続き、かなり英語が舞っていて
でもそれだけで
簡単な語彙が再び英語に入れ替わってしまっていることに驚愕

 

それに、何か言おうとして脳内で英語で組み立てていても、
途中でど忘れしてドイツ語が混ぜこぜになってしまうし

何だかこの数日間だけで、
ガクッとドイツ語が喋れなくなってしまった気がする

 

そして、それは今だからまだいいけど、
帰国した後とか、就職した後とか、
たた日常に戻るだけで、私はどんどん忘却してしまうのだろうか

 

私は一体、何のために、何を目指しているのか
それをこの一週間、
皆と集まっている時も、一人で帰っている時も
ぼんやり、考えていて

 

もっと皆と仲良くしたい、馴染みたい
どこか私は異端なんじゃないか
こんなことしてないで黙々と勉強した方がいいんじゃないかとか

 

“今しかできないこと”の意味を、一生懸命考え続けている

 

 

 

今日もお誘いがあったのだけれど、
昨日の誕生日パーティーの解散が午前3時だったのもあって
多分皆疲れ切っていて、参加人数は少なそうだった

 

企画自体はめちゃくちゃ素敵だったのだけれど、残念
私も起き上がったのは結局11時過ぎで、
だらだらと家事をしたり、必要事項を確認していたり、
原稿を書いていたりしていたら、こんな時間

 

まあ、日曜日ですから
と気楽に言えるのは、
ようやく原稿の終わりの目処がつきそうだから
お願いだから、あと2万字以内に収めてくれ、自分

 

何だかんだ毎日寝ている時間は8時間くらいで
健康的な長さだから許せているけど

 

これからはダラダラしてたら、
何も達成できないまま終わってしまうんだろうな

 

あーあ、本当に自分に甘いな、私
明日はしっかり午前中作業できるような時間に起きたい、と思う

 

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日本では台風が猛威を振るっていると聞いて、とても心配だった
被害を受けた方の状況が、
一刻でも早く好転するように願っています

 

そんな中、この二日間のドレスデン
今までにないほどの快晴っぷりで
ようやく、この街の美しさを知れたように思ったな

 

10.10.2019

 

 

 

今日は、例の集まりに誘われて、
本日ドイツ公開だった(らしい)"Joker"を見に行く

 

この映画の存在を知ったのは、
ヴィリニュスの街中に貼ってあった広告を見たとき

 

最初は何のことやらという感じだったけれど、
そのうちSNSなどにも上がってきて、
ああ、バットマンヴィランの話なんだな、と知る

 

まあ、全くアメコミに造作が深くないので、
まさか見に行くことになるとは

 

確かに描写は結構エグいシーンもあったし、
分かっていても飛び跳ねてしまうシーンがいくつもあった

 

でもこの映画をみて私が感じたのは、
“自己存在の否定・肯定”という極めて現代社会にも通じるテーマ

 

この映画は、
社会的弱者がいかに自己の存在を他人に認めてもらえるか、
反対に、マジョリティはは“ここまでしなければ”彼らを無視してしまう、という
私たちへの警鐘、とも取れるような

 

主人公のアーサーは、断じて普通の男ではない
失笑恐怖症に苛まれながら、自分の母親の介護を続け、
しかしその身の上ゆえ(だと思う)大道芸を続けている

 

それだけでなく、理由もなく周りの人の悪意を一身に受け続け、
ついに彼の性格は反転してしまう

 

もちろん、元々そういう傾向は持っていた、という方が正しいのだけれど、
でも、これは人々が彼を無視し続け、嘲笑し、
悪意を向け続けた結果、とも言えると思う

 

そして最終的に彼は、抗議を続ける労働者や貧しい者たちに
彼らの象徴として担ぎ上げられるのだ

 

犯罪行為や、大凶事を個人の責任にするのは、たやすい
けれどその背景には、きっと何かしらの
防ぐことができたであろう要因がある、と私は思う

 

日本のメディアは凶悪犯罪を報道するとき、
何かと個人のせいにしたがるけれど
その背景に何があるのか、
なぜそういう深みのある議論を展開してくれないのだろう

 

現実はサーカスではないのに
娯楽として消費しても、何ら世界は良い方向に進まないのに
目先の利益ばかり追った報道には、
つくづく溜息が出るし、腹立たしい

 

 

 

そしてそのあとはバディプログラムのパーティー
皆で向かったのだけど、
何故か皆ドイツ語を話せるはずなのに、
英語の会話の方が多く聞こえてくる

 

私たちが話していたグループの輪の中にも、
英語しか話せない子がいて、
そうなると必然的に会話は英語になる

 

もう本当に、悔しくて恥ずかしくて
言っていることは殆ど分かるし、
言いたいこともあるのに

 

全然、全然、言葉が出てこない

 

語順もドイツ語に影響されているから、
動詞を置く位置はめちゃくちゃだし、
現在完了と過去形の違いもドイツ語を喋っているときは気にしないので、
ただでさえ苦手だったのに、もっとめちゃくちゃに

 

自分が勉強しなかったのが悪い、それは120%確かで、
しかもそれから逃れたくて、ドイツ語に注力することを決めた節はある
それでもやっぱり、全く逃れるわけにはいかないし、
このコンプレックスは克服しない限り、
一生私を追って回るのだな

 

ああもう恥ずかしい、本当に
やらなきゃ、やらなきゃ、
原稿やら日記やら、やっている場合ではない、とさえ思ったけれど

 

昨日は夜、星空が見えていて、
夜道を一人、天上を眺めつつ帰っていたら、
少し気分が落ち着いてきて

 

焦って積んだレンガほど、脆いものはない
コンスタントに、一つ一つ、丁寧に置いていくしかないよね、今は