憧れの、北国へ
飛行機から降り立った瞬間に、ぴりっと刺すような冷気
ああ、これでこそ北の国だ、と興奮が抑えきれない
そして、将来はこの空気の中で暮らしたい、
なんて大それたことまで、考える
17時間に及ぶトランスファー、9時間のフライトを経て、ヘルシンキへ
当然、興奮こそすれ、身も精神もやつれ果てていて、友人も私も、ぼうっとしていた
荷物を預け忘れたり、鍵を無意識のうちに閉まってしまっていたりね
真っ黒な夜空に、白磁の建物がそびえ立つ
ヘルシンキ大聖堂の前には、もう人気がなくて、閉館かと心配したけれど、
中からは微かにオルガンの清廉な響きが漏れ出ていた
座って、じっと耳をすませる
オルガンが入り口の上にあるのは、
祝福は天から降り注ぐことを表現しているから
確かに、美しい音色に包まれると、洗われるような思いがした
後から、オルガンは毎週水曜日にしか演奏していないことを知る
ちょっとした、ラッキーなイベント
それから、アテネウム美術館へ
ここで目当てにしていたのは、ガッレン=カッレラの『カレワラ』の作品群
中でも、この『アイノ』は必ず見たいと思っていた
言い表せぬ、この躍動感と、透明感
他にも、レミンカイネンの母の鬼気迫る表情や、
イルマリルの麗しさも、見られてよかったな
それから、この絵画
私は、全然北欧のデザインやアートに詳しくないのだけれど、
予想通り、やっぱり一番心を惹かれたのが、風景画
中でも、この絵に吸い寄せられた
何故なら、これが一番、私がこの世に存在していてほしい、
理想とする冬の姿に近かったから
この夕焼けの色合いの、見事さよ
Fanny Churbergという女性の画家によるものらしい
今度、ちゃんと調べてみよう、と思った
あとは、Albert Edelfeltの、水面の描写の美しさに、目を疑った
それはまるで、窓から外の景色を覗いているようで
水面は確かに、陽の光を反射して、揺らめいていた
まだまだ、世の中には私の知らない、美しいものがある
そのことを自覚するだけで、日々を生きる意味は、生まれてくる
そう、例え楽しみにしていたサーモンスープが、売り切れだったとしても、ね