あまだれのごとく

時々迷い込む後悔の森

22.7.2021

 

 

この場で文章を綴らなくなってから、長くて3ヶ月くらいのつもりだったのに
知らぬ間に、半年以上も経っていた
それほどにこの期間はもう、めまぐるしく過ぎていき
その速度と自身の矮小さが
深い谷底へと転がり落ちる、小石のようだった

 

私のこの先少なくとも数年へ、大局的な方向性で言えば一生へ
影響を与える物事が決まった

 

それまでは全然、うまくいかなくて
一生定期的に後悔して、もはやトラウマになっているようなヘマも重ねて
乱気流のような感情を抱えながら突っ切ってきた

 

そして今でも、この結果で満足していいのかと
猜疑心を覚えない、といえば嘘になる

 

 

 

私が手に入れたカードははっきり言って
自分にとってかなり良い条件を兼ね備えていた

 

「無いカード」から無理やり選んだわけではない、
自分がやりたいことが叶えられるセクターにいる、
努力次第でどんなポジションも手に入る上に
次のステップに進むことへも、あまり障壁がない
なにより「間違いがない」という点で、もっとも優れている選択肢だった

 

けれど、そこに全く妥協がなかったかといえば、
はっきりとは否定できない
かといって「ではすべてのカードの中から好きなカードを選んでください」と
仮に問われても、多分答えに窮する
どうしても欲しいカードが今ここに存在するわけでも、ない

結局、思考の末に浮き上がるのは、
条件の問題ではなく、自分の覚悟の問題だった

 

 

 

いつも「やりたいこと」と「やるべきこと」が一致せずに、苦しい思いをした
今選んだカードを引けば、その悩みの大部分は蒸発してくれると考えていた

 

でも、それはあまりに安直すぎる思考で
とってつけたような論理で他人は騙せても、
自分の本心は、まったく騙せない


私にとって自由に文章を綴ることは、呼吸に等しい
けれど、現実を直視すれば、
人一人の呼吸に値段がつくことは、ありえない

 

私にしかできないことがなんなのか
私が本当にやりたいことの輪郭が、未だにつかめずにいる

 

こんなときに、ル=グウィンが『ファンタジーと言葉』の冒頭で引用していた
ヴァージニア・ウルフの言葉が思い出される

文体って、全部リズムなの。
いったんリズムをつかんだら、間違った言葉なんて使いようがないの。
それはそうなんだけど、もう午前中も半ばを過ぎたというのに、
わたしはここにこうしてすわり、
イデアもビジョンも頭の中にいっぱいつまっているのに
それを外に出すことができないわけ。
正しいリズムがつかめないから。

 

ヴァージニア・ウルフ「ヴィタ・サックヴァル=ウエストへの手紙」
一九二六年三月一六日

 

私の頭の中でも
興味や関心や問題や痛みの数々が
異なる色の靄としてくすぶり、微妙なニュアンスを形作っている

 

でも、私はそれを人々と共有できる形で
外に出す方法を知らない


それはきっと、この世に未だに発明されていない、
生を受けていないんじゃないかとすら、おもう

 

肩書や活動は、インベントしないとね
もう少し若くて、すべての物事に怒り、絶望し、殴りかかっていた頃の
自分が、そういう風に皮肉に笑う

 

それなのに、
時間が経てば経つほどに、
濡れたインクのにじみが広がっていくように
不思議な色合いが開かれたかとおもえば、
うすぼんやりとした痕跡だけを残し
最後にはなにがなんだか、分からなくなってしまうような

 

どんどんと、自分の力が失われていくように感じる

 

22歳にもなって、大人になったら得られるとおもっていた
色んなことが手付かずのままで、未だ情けない自分のままだ

 

前よりも少しだけ、いろんなことを学んだら
角が取れて、まるくなって、人当たりだけがよくなって
単色だった靄が、複雑な様相を描き、
それはもはや、自分でも捉えきれなくなってしまった

「私の足元にあるものは、一体なに?」
そんな根源的な問いと、向き合うモラトリアム

 

 

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