あまだれのごとく

時々迷い込む後悔の森

23.9.2018

 

 

 

夜が明けるくらいの時間帯に、
薄ぼんやりとした光が窓から差し込む中、携帯が鳴る
普段なら電話なんかかけてこない、ある腐れ縁の友達から

 

どうしたのか、と掛け直すと、
どうやら一緒にプロジェクトを進めるメンバー間で対立が起きているらしい

 

「私たちは旅することを目的として旅をしているんだ。
でも、彼らは何か目的がない旅なんて、旅じゃないっていうの。
そんなことはないって、私は思うんだけど」 

「つまり、その意見の相違で話が前に進まないの?」

「うん」

 

私は、咄嗟に答えた

 

「それはきっと、旅に対する想いの次元が、違うんだよ。
旅すること自身を目的だと思えるなんて、すごい高次元のことだと思う。
何かを得たいとか、何かを見たいとか、そういう言い訳をしなくていいんだから」

 

そこで夢は、覚めた

 

 

 

夢は、思ってもみない、深層心理が怖いほど滲み出る
言い訳をつけて目的を手段化させるよりも、
ずっといい、ということを言いたかったのだけれど、
それは一方で、私自身への風刺にもなりうるんじゃないか、とゾッともした

 

手段と目的を、すり替えたくはない
そんな弱い意志で進められる物事など、ないと思うから

 

 

 

今日は十代最後の日
そんな日に、一人で「銀魂」を観てきた

 

結論からいえば、もう筆舌に尽くし難いほど満たされた
笑ってるか、かっこいいと見惚れているか、或いはじーんときてるか
細部の感想は取り敢えず省くけれども、
その瞬間しか私にはなかった

 

 

 

私は別に映画通でもないし、一応家に銀魂全巻とアニメはほぼ全部見ているけれど、
ガチな方のオタクではない、と思っている
けれど、それはあくまで謙遜であって、
一人前のファンでありたいと思っている、いつも

 

だって銀魂が無ければ、
今私は多分少年漫画を読んでいないし、
こんなにフランクな性格になっていない
(そりゃ最初に見たアニメの回がヘドロ一家との温泉回で、ドン引きしたし、
当時純情な小学生だった私は罪悪感にかられたけれども)

 

何より、私は確かに、あのえげつなく汚い描写に塗れた作品から、
“人間の信念とはなんたるか”
を学んだつもりでいる

 

そして、今現在擦り切れるほど聴いている、
川瀬智子に再開することも出来なかっただろう

 

 

 

高校の時にも振り返ったのだけれど、
この作品に出会ったことは、私にとって人生の大きなターニングポイントだった

 

思い返してみればこれを勧めてくれたのも、
小学生の時、果たして私のことを覚えてくれているかも分からない、
一瞬の付き合いしかなかった子達だった

 

それでも確かに、彼女たちは私に「せかい」をくれた

 

 

 

誰かに「せかい」を渡せたから、えらいわけではない
そんなことで人間の価値は決まらない

 

それでも、今私は、
「せかい」を享受する側ではなく、
「せかい」を作る側にいたいと切に願っている
それは個人的な願望であって、将来への望みだ

 

私はあと1時間ほどで、社会的に大人になる
でも、だからといって正直「おとな」になる変化を恐れてもいないし、
恐れ入ってもいない

 

だって、いつだって人間が「おとな」になるのは、
段階的にではなくある一点においでで、
私にとっての一点は、
八月末、自分のアイデンティティを確立できた時だった

 

「せかい」を作る側でいたい
それは勿論なのだけれど、それよりも
私はこれから、自分の「好き」を他人に隠さなくてもいいような人間になりたい

 

銀魂が好きなことも、言えなかった
川瀬智子が好きなことも、言えなかった
桜庭一樹が好きなことも、米澤穂信が好きなことも

 

それは好きなものを否定されるのが、怖かったから
好きなものを否定されれば、自分のことも否定される気分になるから、
という自己防衛

 

そんなものは、打ち崩してしまえばいい
私自身が、その好きなものたちへの担保になるような器の人間になればいい
私が太鼓判を押すのだから、それらが否定されるわけがない
むやみやたらに人の趣味を否定する人たちなんて、放っておけばいい

 

そういう自信が、これからの私には必要だと思うし、
それを得るために生きていきたい

 

その姿勢が、ゆくゆくは私の作りたい「せかい」に、
少しでも影響を与えられたらな

 

その「せかい」は、全ての人が、どんな思考や感情を抱えてこんでいてたとしても、
そこにいていいんだよ、という存在を認められる、
不安を拭ってくれるせかいであったらいい

 

他者への攻撃性と暴力は、
いつだって未知に対する不安から生じるものだと思うから

 

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